ファィブ・イズ・イナフ(マクスウェル家)

 家庭滞在

米国内旅行のときに紹介されて滞在した家庭を含めると、私の米国留学中約20家庭ほどにお世話になり相手側の好意での宿泊、共に活動をしたことが、深く印象にのこる。まさにアメリカの家庭は外国人留学生に開放されているという感があった。これらはほとんどがいわゆるアンクロサクソンープロテスタント系の人たちでその他2~3のユダヤ系、プエリトリユ系二世などの人たちの家庭にも滞在した。しかし、いずれも中流以上の職業もかなり上級なもの( 医師、パイロット、教師など)で安定している家庭であったので若干変化がないのは否めない。たまにプエリトリコ系の家庭に行ったときなどは別の世界のようで上品さにかけるが全く楽しいものであり、私には居ごこちの良いところであった。また、帰国途次のヨーロッパ旅行で英国の家庭にも一週間滞在したが、米国の家庭とは全く様子が異り、こまかく観察すると非常に興味深い点を多く発見するがこれは別項でふれることにする。
ここでは、SIT(サマースクール)に在学中初めて訪問したアメリカ人家庭のマクスウエル宅での経験。SIT終了後に組まれていたプログラムであった。3週間のソイニネン氏宅での滞在について述べることにする。

ファィブ・イズ・イナフ(マクスウェル家)

ABCネットワークで毎週水曜の夜放送されている「エイト・イズ・イナフ」という人気番組があつた。一種のアメリカン・ホームドラマで8人の子供を持つ父親がいて、その子供たちは、快活だがいたずら好きでもあり、つぎつぎに小事件を引き起こす。母親を失ったこの家の主人は毎日大忙しでそれらをアメリカ的な方法で解決していく。画面の中は終始あわただしいが幸福なアメリカ家庭の一面かもしれない。又はアメリカにとっての理想の家庭像なのかもしれない。8人の子供は多すぎるので、ドラマの題が「エイト・イズ・イナフ」である。マクスウェル家は子供の数は5人だが全くそのテレビ番組そっくりの家庭だった。日本ではあまりみかけないTypeの家庭ではないだろうか。週末のたった3日間の滞在だったので深くはわからないが、子供たちの独立心の強さ、両親もそれらを認めていること、家族ぐるみで活動に参加する積極性などから日本の家庭との異いを感じた。ともかく、この家庭滞在は私にとって初めて直にアメリカの家庭にふれることでもあり、今でも一番印象が深く最もアメリカ的で私の好きな家庭であった。彼らの家はマサチューセッツ州のグリーンフィールドにあり、主人のミスター・マクスウェルはもと、おはいお州のケント大学で哲学を教えていたそうである。子供たちは上から、長女のステファニー(18才)、次女リサ(14才)、長男トム(13才)、3女ジォディ(9才)、次男イアン(3才)であるが3才のイアンは別にしてそれぞれ自分の役目を家庭内で持っており、親にはあまり手をかけずに独立してやっているようである。私の接待役はトムだったらしく、かなり気をこまかく配慮してくれた。近所の室内水泳につれていってくれたり、サイクリングをしに行ったり。そして何度も私が「何をしたいか」「充分楽しんでいるか」を聞いて来る。家に帰るとこんどはジォディが彼らの部屋の中を案内してくれたり庭で飼っている動物の説明をしてくれたり、家庭全員大活躍ではりきっていた。しかし、両親を始め日本に関しての知識は全くなく興味もあまり示してないようであつた。つまり日本人として歓待してくれたわけではなく個人として迎え興味を持っていたくれたので、私にとってはこの方がうれしい気がする。これは留学生活にいつも言えたことでその方がアメリカに住んでるという実感があるので好きだった。
この家のある場所は、大きな国道沿いだが周囲は森でとなりの家まで200mぐらいある静かな郊外であった。従ってダウンタウンまでは車で20分ぐらいかかり買ものは一週間に2~3回町まで行き、食事の材料などを買い込んで来る。家族のたのしみは、身近なところでは、テレビ、近くの川での水泳などだが、ゴルフ場も近くにあり、18ホールゴルフ場でアイアンとパターを貸してもらってプレイするのに$1.00という安さだった。またドライビング・シアターもマサチューセッツ州には多く土曜日の晩には車で出かけて行った。わからない英語はとなりのステファニーの解説付きだが、彼女がものすごく早口であのボストンなまりがあり、映画のダイアログの方が結果的によくわかった。(ボストンなまりは早口でDid you eat?がJeet?に聞こえると他の地方のアメリカ人は言っている)。ニューイングランド地方の夜は夏時間をとっているせいもあり、暮れるのがおそく、2本の映画を見終ったときは夜中の12時を過ぎていた。しかし車の内で又は外にもうふを引いて横になりながら大きなスクリーンに映る画を見るのにはやはりアメリカ的な良さがある。米国人の子供たちも日本人の子供たちと同様にテレビ好きなのには変わりない。土曜日の朝はマンガの時間であり、テレビの前に集まって長時間見ている。その中でコマーシャルの時間が長く、くりかえし同じものを流しているのが目についた。日本製品のコマーシャルも多く子供たちも憶えてしまいテレビと一緒に歌っている。
アメリカの家庭では日が暮れて少しぐらい暗くなってもあまり電灯をつけたがらない傾向がありどの家庭を訪れても少ないあかりですましているのに気がつく。そしてリビングルームを蛍光灯で照明している家はまず見当らない。マクスウェル家でも、夕食のときに大きなステーキを炭で焼いてごちそうしてくれたのだが周囲が日が暮れて暗くなっても電灯をともさないので不思議な感じがした。またアメリカの家庭では、ほとんどの人が犬かねこを飼っている。マクスウェル家でも大きな犬2匹飼っており、とても馴れていてかわいいのだが犬についている虫(ノミ)が家の中じゅういたるところにおり、体じゅうさされてしまった。家族の人はもう血が馴れていてさされないそうだが、これには大変よわった。奥さんのルースとジュディに話したら、2人とも涙を流しながら笑って、犬を飼い始めた頃彼らもさされて困っていたと言っていた。ともかくこの頃はアメリカに付いて1ケ月も経たない時期であり、たった3日間の家庭滞在であったが新しいもの、魅力的なものを見つけることができアメリカンライフの合理性、自由さ、余裕などというものが全く抵抗なく受け入れられることができた。これらのシステムは家庭のボランティアによって成り立っており、生徒には全く費用がかからないようになっている。その後もマクスウェル家にはスタンフォードに移ってからもよく電話をしたり、たまに遊びに出かけたりしていた。

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